●アサザトピックス●
よみがえれアサザ咲く水辺
霞ヶ浦からの挑戦



鷲谷いづみ・飯島博著
出版:文一総合出版 定価1900円(消費税別)
アサザプロジェクトのすべてがわかる本です。
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アサザとの出会いから始まった。  

 すでに述べたように、霞ヶ浦では護岸の建設などによって多様な環境が失われ生
態系の単純化が進んでいる。この湖を再生させるにはまず湖の現状を把握し、湖が
持つ可能性、「再生の芽」をしっかり見定める必要がある。

 このように考えた私は、1994年春から湖岸線250キロ全体を歩いて行う調査を
始めた。毎回20〜50キロを歩く調査には、小中学生が数人づつ参加した。堤防に
沿って歩きながら、湖の可能性を見つけるこの「宝探し」をほぼ毎週くり返し、二
年間に湖を四周以上した。

中略  

 その日は、昼過ぎから強い風が湖岸に向けて吹きつけ、沖には白波が立っていた。
護岸に波が叩きつけ、水しぶきを上げていた。風に吹かれて歩くと疲れもたまりや
すい。アサザ群落を見つけると待ちかねたように座り込んでしまう。いつものよう
に湖に向かってぼんやりと眺めていると、ふとあることに気がついた。  

  数十メートル沖まで広がっているアサザの大群落は、沖からの波を受けると先端
部では葉を大きく上下に揺らしているが、その上下動も群落の中を進むうちにしだ
いに丸くゆるやかになり、岸近くになると波はほとんど消えていた。そういえば何
時になく群落の中にカイツブリやオオバンの幼鳥が見られるのも、波が穏やかな群
落の中が水鳥達の避難場所になっているためらしい。

中略 

 実は護岸工事が実施され水草帯が減少して以来、霞ヶ浦では波の侵食によるアシ
原の減少が問題になっている。その対策として、建設省が数ヶ所で石積みの消波堤
を造るなどしていたが、十分な効果は得られていない。しかも、石積みの消波堤に
は多くの費用がかかるので、広大な湖全域での実施は不可能に近い。また、消波堤
の沖側が打ち返しの波で深くえぐられてしまうこともある。波を力ずくで抑えるこ
とには限界があるのだろう。

 それに対して、アサザ群落はどうだろう。波をはね返すわけではない。しかし、
波に身を任せながらも波をしだいに和らげ、ついにはわずかな上下動に変えてしま
う。「柔よく剛を制す」とはまさにこのことだ。

 ついに、わたしたちは湖全体に寄与する「再生の芽」を見つけたのである。(見
つけたというよりも湖の語りかけにやっと応えることができたといった方がよいだ
ろう)。アサザは湖が持っている「治癒力」「自己再生能力」を高める存在ではな
いか。アサザは、湖の自然がもつ重要なしくみをわたしたちに教えてくれたのだ。
このしくみを生かせば、湖全域での自然復元事業が可能になる!しかも、水辺にア
サザを育む取り組みにはだれもが参加できるはずだ。「市民型公共事業」の発想は
このときに生まれた。
                     「よみがえれアサザ咲く水辺」より





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